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ラボでやろう。

分子模型は直観的に構造を理解することに有用です。複雑な構造を持ったタンパク質の分子模型を手軽に印刷し、研究に役立てる日が来ることを目指してブログを開始しました。※2013年9月現在、ほぼその製法を確立出来つつあります。もし自分の研究室でも、と考えていらっしゃる方は、まず川上までご連絡ください。

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模型の棲み分け。

さて、10数万円で3Dプリンタが買えるようになりました。材料は千円程度までで、そこそこの大きさ(一辺10センチくらいでしょうか)の分子表面やリボンモデルの模型が打ち出せるようになりました。

ここまで来るまでに、
(ちまたで言う)3Dプリンターというものがどのように動くのか、
どんな精度で、どのくらいの硬さのもの、どのくらいの大きさのものが、どのくらいの成功頻度(ここ大事です。印刷は成功するもの、というこれまでの紙へ印刷するプリンターと認識を異にしないといけません)で印刷が出来るのか、具体的にどのような技術的な難関が、どのような種類、形状の模型を打ち出す時に、どのくらい存在するかが、実感、経験として見に着いた事と思います。

…それを踏まえて、あえて言ってしまうと、

このくらいのものしか、これだけ苦労しても出来ないのです。
これがたかだか10万円台の3Dプリンターでできる事の限界です。

しかも、私が下調べして、すでにできる事を、ノウハウを聞きながらやっていても、これだけ大変です。
Cubeという、初心者向け、良く考えられたプリンターで、これだけ大変です。
いや、これまではそれすら、まったくできなかったのですから、大変な進歩だと思います。ですが、やはりタンパク質研究をしていると、もう少し、側鎖が表現できるとか、色分けできるとか、合体ができるとか、機能を求めたくなります。
そうです、一旦模型を手にすると、今度は模型が有るのを前提として、次に必要な事を考え(ついて)しまいます。

しかし、先も言った通り、10万円のプリンタだけでは、ここまでが限界です。
高価なCADソフトを駆使すれば、合体模型も出来るでしょう(PLAは硬くて無理でしょうか)。

ですが、自分の研究室で、これ以上の労力を払って、いちいち分子模型を作ろうと思いますか。
CADソフトに数十万から100万以上かけて、3Dデータ編集に数時間かけて、印刷して具合を見ては修正して、を繰り返して。

その時間本来の研究に費やす方が、有益だと思いませんか。
…10数万円のプリンタで、そこそこの模型を手軽に印刷するノウハウは、すこし大変でしたが、身に着けました。あとは要所要所で、「あ、この模型あると便利だな」、というときにチャチャッと印刷する程度で良いのではありませんか。

こっから先は、お金も労力もかかるというのも、模型製作を通して、肌でわかってもらえたのではないでしょうか。そしてここからが本題です。では、その高度な模型はどうするか。

最近、お金を持っているラボが、3Dプリンタの上位機種を買おうかどうか迷っているという情報を得ました。
お金にものを言わせて、とにかく上位機種を買っておけば、いろんな難しい模型でも自分たちで製作できると考えたのでしょう。しかし待ってください。印刷原理がおなじFDM(樹脂溶融)だと、やはりノウハウを身に着ける必要が有ります。その役目はラボの誰がするのでしょうか。そんな一流の、忙しいラボで。
おなじFDMにも関わらず、印刷機が100万以上のクラスになると、使用する樹脂も実はべらぼうに高くなります。おいそれと失敗して試行錯誤…ということは時間もコスト的にも、なかなかできません。
…結局買ったは良いが、研究室の誰も使わず、ほこりをかぶったまま、という状況が目に見えています。

…実は別の分野で(分子模型以外の使用用途で)このような買い方をして、ほこりをかぶったまま型落ち、廃棄寸前、という研究室、企業が沢山あることを聞いています。

こっから先はさらにすごい話です。

カラーの分子模型が欲しい!という事で、FDMではなく石膏粉末方式のフルカラープリンタを買うとなると、プリンタは900万します。保守契約で年間100万かかります。3Dデータの編集ソフトも、Magicsというソフトは130万、年間保守が40万近くかかります。そして、粉じんが出ますから、それ専用の部屋と、換気(吸塵、排気)施設を整えないといけません。どれだけお金かかるんでしょう。
石膏の粉、8キロで10万します。8キロでは印刷開始できるだけの粉の量ではありません。それの数倍必要です。印刷に使うインクは1ccで40円!もするのですが、これのカートリッジがCMYK、4色分必要です。それ以外にバインダという透明のインク、またヘッドの洗浄液が1cc10円程度、これをバカバカ消費します。印刷してなくても、ヘッドの乾燥保護という目的でインクをパージ(空打ち)して消費します。プリンタの印字ヘッドも、あっという間に、数回印刷したら交換しないといけません。一色のヘッドで6千円。これを5つ交換です。印刷したら今度は、石膏の間にしみこませる液、これが1ccで50円!くらいします。
どんだけ印刷コストがかかるんでしょうか。。。。。
印刷にかかる時間、印刷後の後処理にかかる時間。印刷、良く失敗します。装置の不具合で。不具合ごとに印刷機のエンジニアを呼んで修理です。印刷失敗するとそれまでのインク、石膏、バインダ、ヘッドの消費寿命を只々浪費します。むなしいです。

恐ろしくなってきませんか。これ、すべて、単にカラーの模型を印刷する、だけにかかるコストです。

さて、分子模型、いろんな機能を持たせるために、3Dデータをいじって、印刷して、複雑な形状の造形物を神経を尖らせて取り出して、後処理をして、さらに、シリコーンを流し込んだり、磁石を埋め込んだり。

段々、kawakami modelがどれだけ大変な作業が必要か、それにかかるコスト、製作する人の人件費を考えると、模型の値段、相場が分かって来ませんでしょうか。

実は、kawakami modelの場合、3D造形に関わる人が、その製作過程の内訳を聞いて、実物を見せると、売価は50万から100万はくだらない、それ以下で売るなんて馬鹿げてる。いや馬鹿だ。
と言われます。「ものにはなあ、相場、ふさわしい価格ってものが有るんだ」と怒られます。

ところが、分子模型を欲しい研究者はそんな製作の現場を全く知らない。というか、テレビの報道の影響で、ボタン一つで、どんな模型でも簡単に出来上がるという印象を持ってしまっている。そんな人が、この模型を見て、価格は数十万です(これでも赤が出るぎりぎりの価格)、と言われても「暴利だ!」と怒る人がたくさんいます。

これが今の現状です。私も研究者側の人間ですので、なんとか、模型の売価を、暴利と思われない価格まで下げたいのですが、今の製法、使用する印刷機では、おのずと下限があり、それではまだまだ皆さんに広く供給するところまで至っていない状態です。

…フルカラー印刷機は、今のところ、特許が関係するので、この高価な機種しか使用できません。数年後には、特許が切れ、もっと安い装置が手に入るかも知れません。インクも、石膏ももっと価格が下がると思います。しかし下がってから、誰かが模型の試作に入っていたのでは、研究に導入するのは大変遅れてしまいます。やはり、今ある技術でできる事を常に試行しながら、そういった技術の進化、印刷機の低価格化にすぐに対応できる体制をとり続けることが、重要なのではと考えています。

…ながながと述べましたが、模型の棲み分け、各研究室ではどの模型をどのように導入すればいいかを、このまま誰も推し進めなければ、上述したように、高価な装置を買って失敗する不幸な例、そのお金が有れば外注で便利な模型を沢山買えた例、などが出来てしまうと私は考えています。なんとか、その旗振り役を私やこの領域の活動を通じて、進めることが出来ればと思います。
  1. 2013/08/21(水) 21:42:52|
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